徳山ヴィーナスシリーズ第14戦は、田口節子の優勝で幕を下ろした。

ヴィーナスシリーズはこのあと、第15戦を10月24日から常滑ボートに戦いの場を移して行われる。

今節のトピックスの1つに、今村豊氏(引退)が初日の10日、いきなり徳山ボートに現れて、関係者に最後のあいさつを行ったことが挙げられる。

8日に東京で行われた引退会見を終えると、9日に地元・山口に戻り、10日には間髪を入れずにあいさつ回りを行った。それは最後に見せた全速戦とも、いつも通りの速攻劇ともいえるだろう。

126期の福山恵里奈(24=山口)と野田彩加(17=山口)は、今節の参加選手として今村氏のピット表敬訪問を目にした。

福山は「今村さんにはこれまで、1度しかお目にかかったことがないんですけど、新人の私にも『けがをすることなく頑張れよ。絶対にけがをするなよ』と声をかけてくださいました」。その時のことが、すごく印象に残っていると言う。

一方、野田は「私は、直接お会いしたことがないんですけど、辞める時の記者会見で今村さんが仰っていた、人に(舟を)当てないないこと、クリーンな戦いを意識していたという言葉を聞いて感動しました」と語る。

2人はともに、まだおこがましいとしながらも「支部の先輩と一緒になって、今後の山口を背負えるように頑張りたいです」と決意を表明した。

山口支部は現在、「若手会」という組織を作り、若手の先輩が、同じく若手の新人やまだ経験が浅い選手の面倒を見ながら、互いに切磋琢磨(せっさたくま)していくという制度を取り入れている。従ってデビューしてすぐに師弟関係を組むことは基本的にない。「若手会」で揉まれながら勉強して2、3年という年月を経た後に、改めて師弟関係を作りたい場合に、そこで初めて師弟関係を構築するというシステムだ。

ただし、それはなにも先輩と後輩の関係が希薄になるというものではなく、むしろ濃厚な関係を作るために、時間をかけて人作りを行うことを主眼にしている。若手からすれば、先輩の人柄や考え方を熟知した上で、教えを請うことができるし、それは逆に先輩からしても同じことになる。

現在、福山と野田の2人は、「若手会」のメンバーを中心に、時間が許す限り徳山ボートに来て、厳しい練習を行っている。

旋回練習をする姿を見ているとこう思う。今村さん、あなたがまいた「種」は、これからも忘れ去られることなく、山口支部の全選手が水をやり続けることでしょう。

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